2017/06/12

OurPlanetTVより/ 甲状腺がん190人〜公表データ以外の把握、検討へ

(県民健康調査検討委員会、今回もOurPlanetTVで中継して下さいました。今回は、3巡目の検査でさらに甲状腺がんの子どもの数が増えたこと、にもかかわらず、市町村別の数を公表せず、浜通り中通り等の地域別になったこと、「3・11甲状腺がん子ども基金」の支援受給者によって明らかになった、経過観察中の甲状腺がん発症がカウントされていなかったことへの批判が殺到したこと、第三者機関の設置についての方向性にやはり懸念がみえてきたことなど、重要な回だったと感じました。 子ども全国ネット) 



記者会見(データに含まれていない症例把握について活発に質問が飛んだ)

東京電力福島第一原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の検討委員会が5日、開催され、事故当時18歳以下だった福島県民38万人に実施している甲状腺検査の新たなデータが公表でされた。それによると、2巡目の検査で、悪性または悪性疑いと診断された子どもは、前回の69人より2人増え71人となった。また3巡目の結果も公表され、4人が悪性または悪性疑いと診断された。1巡目から3巡目をあわせた数は、甲状腺がんの悪性または悪性疑いが191人。手術を終えた人は7人増え、1人をのぞく152人が甲状腺がんと確定した。

資料はこちら。

「経過観察」の症例把握の方法を検討へ

福島県の甲状腺検査をめぐっては、2次検査の時点ですぐに穿刺細胞診を実施せず、「経過」となった子どもが、その後、甲状腺がんと診断された場合、検討委員会へ公表しているデータには含まれないことが、今年3月に発覚。県の担当者は会議の中で、「検査後の経過観察の中でがんが判明した場合などは追跡が困難であり、個人の情報の問題もあり、報告していなかった」と説明した。

これに対して委員からは批判が殺到。甲状腺専門医の清水一雄委員は、「根拠のないデータに基づいて検討しなければ、この検討委員会の議論は空論になる。事実がわからなければ、何のために検査をしているかわからない」と指摘。また、国立がん研究センターの津金昌一郎委員も「公表されていない症例を除外したデータでは、国際的な論文は書けないと思う。当然、それらのデータは共有していただきたい」と述べた。また環境省の梅田珠実環境保健部長も、「保健診療に移行すると、別ルートとして扱われるというのは由々しき事態。この検査の信頼性に関わる。現在、実施しているサポート事業には、基礎資料として把握するという目的もあり、把握する努力をすべきだ」と提案。他の委員からも、「個人情報に配慮しながらできるかぎり把握すべきだ」との意見が相次いだ。

星北斗座長は、「できるだけ早期に、枠組そのものを見直すべきかもしれない。全国に散らばる患者を追いかけるのかなどが、今後の検討課題だ」とした上で、現在のデータからこぼれている症例の把握や報告方法について検討する方針を示した。

サポート事業に報告症例外が3例

検討委員会ではじめて、「甲状腺検査サポート事業」の実施状況についても報告があった。福島県民健康調査で2次検査となった、主に18歳以上の患者の医療費を助成する事業で、2015年7月に開始している。報告によると、医療費の助成を受けたのは、2015年度で延べ121件、2016年度で延べ104件の計225件で、交付人数は192人。そのうち、甲状腺がんの手術費用の助成を受けたのは62人だった。また、そのうち3人が、検討委員会でデータが公表されない「経過観察」後にがんが見つかった患者であることも報告された。

第 27 回「県民健康調査」検討委員会(後半=甲状腺がんに関する討議)

 

市町村別のデータ公表見合わせ

今回初めて、公表された3巡目の甲状腺検査結果。この結果の公表方法が、これまでと大きく変わった。これまで市町村単位で公表されていた結果報告を変え、避難指示が出るなどした13市町村、中通り、浜通り、会津地方の4つの地域に分けて、人数を公表したのである。

甲状腺検査を担当している福島県立医大の大津留晶教授は、「レセプト情報・特定健診等情報の提供に関するガイドラインでは、人口2000人以下の市町村別によるデータの開示をしないこととされている」などと変更の理由を説明したが、福島大の清水修二委員が「相当、重要な変更だ」と反発。「これまで通り市町村別の数字を追跡する必要があるのではないか」との見方を示した。また、山梨大学の加藤亮平委員は「4つの地域に分けた理由は何か。」などと質問。これに対し。大津留教授は、4つの地域分けが、行政単位の実務的なものであると認めた。また、国立保健医療か学院の﨔田尚樹委員は、「検討のデザインや形跡方法をあらかじめ決めておかないと恣意的になる」と批判。さたに広島大学の稲葉俊哉委員も、地域分けが大きすぎるのではないかと指摘し、「具合いの悪いデータを隠しているのではないか疑われる恐れがあると」と懸念を表明した。最後に、清水委員が再び発言し「私が心配しているのは、この県民健康調査音信頼性を下げること。それは避けたい。非常に重要なことなのに、急に変更するというのは、この調査の信用性を低下させる」と警鐘を鳴らした。星座長は、これらの意見を受け、発表方法について引き続き議論するとした。

IARC内で福島の甲状腺検査結果を検討

甲状腺検査の評価をめぐり、星座長が12月の検討委員会で提案した中立的、国際的、科学的な「第三者機関」については、県や国が直接、設置することは見送り、国際がん研究機関(IARC)が検討を行うことを、県民健康調査課の鈴木陽一課長が報告した。環境省の梅田環境保健局長によると、検討のメンバーは、加盟国から委員で構成され、無症状の甲状腺がんをスクリーニングすることの是非など、被曝後における甲状腺モニタリングの方向性を議論するという。検討内容は翻訳され、福島県に報告される予定。検討の結果、甲状腺検査の不利益が強調されれば、甲状腺検査は縮小ないし中止となる可能性もある。IARCは、国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の外部専門機関。福島県立医大の山下俊一副学長が昨年、同機関で、福島県の甲状腺検査について講演を行っている。

委員は改選へ

今回で、検討委員会と甲状腺評価部会は任期切れとなる。放射線や甲状腺、疫学など、各分野の機関から推薦を受け、次回以降の委員を選定することが公表された。甲状腺評価部会の部会長を務める清水一雄委員は「バランスの良い構成にして欲しい。甲状腺の臨床医を増やす必要がある」と提案。また、津金委員からは「生命倫理の専門家や法律家」、﨔田委員からは「患者の代表」を委員に含めるよう、それぞれ提案された。

第 27 回「県民健康調査」検討委員会(前半)

 
甲状腺がんの結果は以下のとおり
(※1巡目の1人は手術後の確定診断で良性結節)

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