2016/08/02

リフレッシュサポ―ト ・311受入全国協議会保養促進ワーキンググループより「保養」に関する実態調査

(リフレッシュサポート・311受入全国協議会保養促進ワーキンググループより、精力的に取り組まれていた「保養」に関する実態調査の結果が出たとお知らせいただきました。原発事故から5年半経ち、この夏も多くの地域で保養が取り組まれていますが、実際には、縮小したりやめたところもあります。スタッフやカンパが集まらなくなったという事情も多い中、市民の善意に頼る保養の限界があります。こうした実情をまずは多くの方に知っていたくことで、今後の保養の方向を見いだしていけたら、と願います。子ども全国ネット)


原発事故から5年半。現在も年間15000人以上が市民の善意で保養へ

保養情報誌を発行する「リフレッシュサポート」と保養団体の全国ネットワーク「311受入全国協議会」が、原発事故の影響があった地域から子ども(保護者も含む)の保養受け入れを行った団体を対象に、「保養」に関して実態調査を行いましたので、結果を発表いたします。

■アンケート調査結果 : https://goo.gl/WezTXC

■調査期間 2015年11月から2016年2月


■アンケート対象

2014年11月1日から2015年10月31日までに、原発事故の影響があった地域から子ども(保護者も含む) の保養受け入れを行った、団体の代表者・事務局長など団体の事情に詳しい方

■調査方法と回答率
234団体にWordデータを送付もしくはアンケート用紙を郵送し、いずれかの方法により107団体から回答を得た。(回収率45.7%)

■保養とは:原発由来の放射能汚染を避け一時的に移動する「保養」。放射能汚染に不安を抱えながらも、長期的移動が困難な子どもと保護者の選択肢として、チェルノブイリ事故後のウクライナやベラルーシを参考に、2011年以降日本でも始まった。

■調査結果
1 寄附金に頼り市民の善意で開催される保養、参加者交通費の負担
調査対象期間中、29都道府県で保養が開催された。保養開催団体の収入は寄附金が71%と最も多くを占め、助成金が15%、参加者の参加費が4%であった。
支出については、参加者の交通費が40%と一番大きな割合を占めた。有給スタッフを持たない団体が69%であり、有給スタッフを持つ団体のうち83%が保養以外の事業を行っていた。ここから、保養が基本的にボランタリーな活動であることが読み取れる。

2 保養への参加は年間約15000人以上
滞在施設型の受け入れ人数4694人とプログラム型の参加者数4607人とを合わせると、107の受け入れ団体で合計9000人強が保養へいったことになる。
全国で234団体以上が保養を行っていることと、リピーターを考慮すると、年間約15000人以上が受け入れ支援団体を通して保養に行ったと推測される。

3 保養を希望する人の7割程度しか保養に参加できていない
1プログラムあたりの平均参加者数は27.2人であり、1プログラムあたりの平均滞在日数は5.3日である。
プログラム型への応募者数は6290名、そのうち参加者数4607名であり、希望して申し込んだ応募者の内、7割程度の人しか保養に参加できていない。
参加者に対して応募者が超過した場合の対応は、36%が先着、17%が保養未経験者優先、15%が抽選、9%がリピーター優先となっている。
ウクライナでは「保養庁」が存在し、全国の州に対しどんな保養が必要かニーズ調査を行い、この調査をもとにプログラム内容や人数を決めて、入札を行う。
保養施設ごとに、州・地域別の参加人数が割り当てられるため、その人数に従い「子ども委員会」がマッチングを行う。一方で、日本における保養は民間の取り組みのため、十分なマッチングを行うことができていない。
保養の参加条件としては、保護者同伴が最も多く、共働き世帯やシングルマザーなどは保養に行きにくい現状である。参加者の居住地としては、福島県中通りが最も多く、次いで浜通りであった。

4 疲弊する保養の主催者
主要な課題として、「活動のための資金が不足している」を挙げたのが28団体、「スタッフの人数が不足している」を挙げたのが17団体であった。
二番目に多かった「原発事故や支援に対する関心が低下している」(18団体)は、資金不足とスタッフ数不足の主な原因ともいえるだろう。
他方で、主要な改善希望点は、「国や自治体で保養を行ってほしい」が32団体と突出して多かった。当事者の需要があるため、行政の代わりに保養受け入れを続けている団体が多数であるといえる。
現在、避難指示の解除が進められており、自主避難者が住む借り上げ住宅(約1万3000世帯、約2万5000人)の無償提供も2017年3月で打ち切るとの方針が福島県を通して示されている。
こうした状況のなか、不安を抱えたまま帰還することになる保護者から「帰還しても保養へ行きたい」という問い合わせが、保養団体に数多く寄せられている。
原発事故から5年経て、保養活動に対する行政による支援の必要性が改めて問われている。

<アンケート実施主体>
リフレッシュサポート(疋田香澄・馬場良枝)
311受入全国協議会保養促進ワーキンググループ(小野洋・佐藤洋)

文責:疋田香澄

<問い合わせ先>
リフレッシュサポ―ト
311受入全国協議会保養促進ワーキンググループ
070-6452-1082(土日のみ)
info.re.sup@gmail.com








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