2016/04/26

チェルノブイリ30年

2016年4月26日 佐賀新聞
http://www.saga-s.co.jp/column/ariakesyou/305134

チェルノブイリ原発事故が起きて数日後、周辺地域の図書館から放射能やヒロシマ、ナガサキについての本、レントゲンの本までもが姿を消した。パニックが起きないようにという上からの命令だとうわさが広がった

◆汚染地に入った環境保護監督局の女性が語る。「私はわかったんです。実生活のなかで、恐ろしいことは静かにさりげなく起きるということが」。昨年ノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさんが、事故に遭遇した人々の証言をまとめたノンフィクション『チェルノブイリの祈り』に記している

◆旧ソ連での事故からきょうで30年。試験運転中の原子炉が暴走し爆発、大量の放射性物質が飛散し北半球に広がった。避難・移住者は40万人を超えたとされる。衝撃は大きく、科学技術で自然を征服できるという神話が崩れたことを教えた

◆これを機に安全を優先する文化の醸成が進んだが、福島事故を経験した私たちには、その教訓が生かされていたのかという問いが突きつけられた。情報の秘匿、「アンダーコントロール」を強調する政府…。二つの事故が重なるようにも見える

◆チェルノブイリから30キロ圏内の立ち入りは今も制限されている。廃炉への道筋は描けていない。核と人類の共存の難しさばかりが露(あらわ)になってくるようだ。(章)

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