2016/03/13

神奈川/福島の子に外遊びを 親子を招く活動「川崎市民の会」財政難 寄付募る

2016年3月13日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201603/CK2016031302000122.html

二〇一一年の東京電力福島第一原発事故で被害を受けた福島県内の親子を川崎市に招き、外遊びなどを体験させてきた「福島の子どもたちとともに」川崎市民の会(同市多摩区)。放射能汚染を心配し、外遊びをためらう親子の心の支えとなってきたが、最近は活動の資金集めが難しく、スタッフも高齢化。運営が厳しくなっている。 (山本哲正)

昨年十二月、市子ども夢パーク(同市高津区)。福島県からやって来た親子が屋外に集まり、パン生地を巻き付けた竹の棒を、薪をくべた火にかざした。参加者は焼き上がったパンを食べ、「温かくて、おいしい」と声を弾ませた。

小学一年と三年の男児を連れてきた福島県いわき市の阿部重実さん(43)は「放射性物質の影響を気にせず遊び、食べられるのがうれしい」と喜んだ。自宅では、子どもが葉っぱなどを手にすると放射線量が高くないか気になり、風が強く吹くと不安で窓を閉めるという。

小学四年の孫娘と参加した同県郡山市の伊左治昌子さん(74)も、ここで安らぎを得るという。「福島産のものを食べましょう」というムードの中、地元で放射能汚染の話題は口にしにくい。「健康への影響が心配。空気の入れ替えではないが、休みのたびに孫を連れてきたい」

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川崎市民の会の中心となる世話人は、元教員や主婦ら約十人。首都圏の大学生や主婦なども手伝いに加わる。

一一年の夏に受け入れを開始。春、夏、冬休みに、それぞれ四十人程度を招く。ベースとなる日程は四泊五日。川崎市宮前区の公共施設に泊まり、外遊びなどを体験してもらう。夏は市子ども夢パークで泥遊びをしたりする。

健康への影響を心配せず、笑顔で泥んこになって遊ぶ子どもたち
=高津区で(「福島の子どもたちとともに」川崎市民の会提供)

費用は交通費や食費を中心に一回百万円前後。半分は寄付でまかなうが、半分は活動の繰越金が頼り。高橋真知子代表(67)は「この春と夏で財源が枯渇する」と明かす。

サポートする側は、事故がないように緊張感を保ち、宿泊先では十分に眠れないこともある。会員の中心は六十代。体力的には厳しいという。

新しいスタッフをいつでも迎えられるよう、活動のマニュアル化も進める。高橋さんは「一番苦しんでいる被災地の親子に喜んでもらえるのだから、支えがあれば続けたい」。

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このような保養事業に取り組む各地の市民団体やNPO法人など約六十団体が参加する「311受入全国協議会(うけいれ全国)」。同会によると、資金難やスタッフの負担を指摘する声は、各団体から上がっているという。

新潟市の団体は新年度、約三百人の受け入れをやめる方向。市の助成金を得るには同額の自己資金が必要だが、めどが立たない。五十代の代表者は「行政主導で取り組んでほしくて、それまでのつなぎに、と仕事をしながら保養事業の事務処理などをしてきたが…」と残念そうだ。

うけいれ全国では、(1)福島県内で子どもの甲状腺がんが増えれば、外遊びなどをさせることに不安な人が増える(2)避難していたが、同県内に戻る人が増えれば、県外に保養に出ることを望む人も増える、と見ており、今後も保養の需要は多いと考える。

事務局は「調査データはないが、受け入れ先が減っている実感はある。春と夏二回の取り組みを一回に縮小する例も聞く」。各団体に課題を尋ねるアンケートも進めており、結果を行政への要望活動につなげるという。

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「福島の子どもたちとともに」川崎市民の会への寄付は、郵便振替(口座番号00260-4-101838)。問い合わせは、市民の会=電090(6926)9218=へ。

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