2016/03/18

茨城/守谷の常総生協 自前で放射能検査 風評被害との戦い続く

2016年3月18日 毎日新聞地方版
http://mainichi.jp/articles/20160318/ddl/k08/040/012000c

田んぼに入ると、前日に降り注いだ雨のせいでぬかるみ、ゴム長靴の足元が取られそうになった。常総市東町の小貝川右岸沿い。小鳥がさえずり、のどかな田園が広がる。

今月15日、常総生協(守谷市)の職員、横関純一さん(34)が「できることは全部やりたい」とビニール袋に土を詰め込んでいた。生協が扱うコメのうちメインの銘柄「めぐみちゃん」の産地だ。東京電力福島第1原発事故で放出された放射性セシウムの含有を調べるため、2011年から農家の承諾を得て試料を持ち帰り、分析。生産者11人の田んぼ五十数カ所からサンプル調査する。

当初は検査機関に委託していたが、11年7月に簡易型の放射能検出器(約500万円)を、12年2月に高精度な検出器(約1500万円)を買った。

自前で調査する理由について、常総生協副理事長の大石光伸さん(58)は「風評被害をなくすため、きちんとした数値を調べて、組合員に大丈夫な食品だと伝える必要があった」と説明する。今後もコメや野菜などの検査を続ける予定だ。
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北海道に続き、全国2位の農業生産額を誇り、首都圏の台所を支えてきた茨城。原発事故はその土台を大きく揺るがした。坂東市生子の農家、清水治夫さん(61)は「有機で無農薬という誇りがあったが、無農薬どころじゃなくなった」と振り返る。

国と県は、放射性物質検査を実施。県内ではヒラメやスズキなど最大15品目が国から出荷制限指示を受け、なおウナギなど6品目が解除されていない。これとは別に、地元漁協や県が海産物8品目の出荷を自主規制している。林産物も原木シイタケは国の制限と農家の出荷自粛が続き、出荷を再開した農家も風評被害に苦しんでいる。昨年3月には、東電から風評被害の損害賠償を打ち切られた県西地域の野菜農家約200人が「風評被害は収まっていない」などとして賠償継続を求めて国の原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介手続き(原発ADR)を申し立てた。
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常総生協は作った地域の近くで販売する「地産地消」をモットーとする。供給高(売上高)のうち茨城、福島両県産の食品は、震災前の09年度は約1億円あったが、14年度は約8300万円と17%減少した。茨城だけに限ると、同じ期間に27%減っているという。

組合員数も減少する中で、3〜10歳の2男2女を育てるつくばみらい市絹の台のイラストレーター、山上文乃さん(41)は「5年間ずっと放射能を測ってくれているので、安心して買える」と語る。

放射能との戦いは続く。【安味伸一、中里顕】

田んぼに入って土壌を採取する横関純一さん=常総市東町で

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