2016/02/24

避難生活の苦悩、文集に 県内30人 明日は我が身…風化させぬ /愛媛

2016年2月24日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160224/ddl/k38/040/689000c

東日本大震災から5年になるのを前に、県内に避難した約30人による文集が出版される。古里を離れる決断をした日のこと。この5年近くの暮らしの苦し さ。政府や東京電力への怒り……。23日、支援者らが集まり、題を「人の痛み この震災を転換点に」に決めた。【黒川優】

編集したのは「県内被災者連絡会」。代表の渡部寛志さん(37)ら、福島や宮城などから県内に避難中の約35世帯と、かつて避難していた約15世帯がメンバーだ。松山市の石手寺に事務局を置く。

文集のゲラ刷りを広げる加藤住職(右)や支援者たち=松山市で 

「(福島第1原発事故を見て)『明日は我が身』とはどうしても思えないものなのだろう。私もそうだった。しかし、『他人事』としてではなく『我が事』と して考える努力だけでもしてほしい」。福島県南相馬市で被災し、現在は伊予市でミカン農家をしている渡部さんは、こうつづった。

「一週間ぶりに入ったお風呂の中で声を出して泣きました。『ごめんね私だけ逃げて、私だけお風呂に入って、私だけおいしい食事をして……』。ビールを飲 んでいる主人がなぜか許せないように思えて、ケンカをした」「環境の違う場所での生活は私たちにとって負担が大きく、故郷への思いが強くなり『どこで苦労 するのも一緒!!』という思いで1年後に気仙沼に戻りました」。他にも、経験者でしか語れない思いが並ぶ。

文集は約200ページ。ベースになったのは、石手寺の加藤俊生住職が、震災1年などの節目に避難者に実施したカウンセリング記録や手記。メンバーらはこ れを基に当時の記憶をたどった。執筆者の一人で松山市末町の主婦、沢上幸子さん(40)は「当時の記憶を風化させずにまとめることができた。次にどこかで 災害が起きたときに、被災者の心のケアにも使えたら」と話した。

出版元は創風社出版(松山市)。3月11日に発行する。被災地にも寄贈したい考えだ。
問い合わせは石手寺(089・977・0870)。

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