2015/06/26

韓国、水産物禁輸崩さず 政府間協議は平行線で終了

 2015年6月26日朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASH6T5QJHH6TUHBI01P.html

 東京電力福島第一原発事故からの汚染水流出を受けて、韓国が福島など8県の水産物の輸入を禁止している問題で、25日、日韓両政府の二国間協議がスイス・ジュネーブであった。非公開で前日から続いた協議は妥結せずに終わった。日本側が規制撤廃を求めたのに対し、韓国側は応じず、協議は平行線のままだった。

韓国は2013年9月から、福島第一原発の汚染水流出による放射能汚染の可能性を理由に、福島、茨城、群馬、宮城、岩手、栃木、千葉、青森の8県の水産物の輸入を禁止。この影響で12年に2万3233トンだった韓国の日本産水産物の輸入量は、13年は2万723トン、14年は1万8285トンに減った。

日本側は、韓国の規制には「科学的根拠がない」などとして規制の撤廃を求め、今年5月下旬に世界貿易機関(WTO)に提訴する手続きに入った。今回の協議はこの紛争解決手続きの一環として開かれ、交渉関係者によると、韓国側は規制について「国民の健康のための措置で、WTOの規則に沿ってとられている」などと主張し、従来の姿勢を崩さなかった。

両国は昨年12月と今年1月、共同で福島県、北海道、青森県の魚介類の放射性物質を調査。日韓どちらの調査結果でも基準値(1キロあたりセシウム100ベクレル)を上回るものはなかった。危険性が高いストロンチウムやプルトニウムは、日本側の調査では検出されず、韓国側の調査でもごく微量だった。

こうした結果が出ても、韓国では、日本産水産物に対する国民の根強い不安がある。

一方で、韓国政府内には、禁止措置には科学的な根拠が乏しいとの意見も出ていた。昨年9月には消費者団体らが参加する専門家委員会を設け、科学的な妥当性の検討を開始。日本産水産物に対する世論の動向も見ながら結論を出そうとしていた。ただ、日本側がWTOへの提訴手続きに入ったことで、韓国側が態度を硬化させた。

韓国産業通商資源省次官補は22日の記者会見で、「放射能の潜在的な脅威から韓国民の生命と健康を保護するための措置だ」と改めて説明。「措置の正当性の証明に最善を果たす」と譲らない姿勢を見せていた。

日本側交渉筋は「結果を持ち帰って精査した上で今後の対応を決める」としているが、交渉期限の7月20日までに妥結しない場合、紛争処理を扱うWTOの小委員会に判断がゆだねられるとみられる。その場合、日本側はWTOへの正式提訴に移り、手続きは最短で9月に完了する見通しだ。

(松尾一郎=ジュネーブ、東岡徹=ソウル、大畑滋生)

0 件のコメント:

コメントを投稿