2015/04/06

教科書検定 再稼働と脱原発併記 原発事故で各社記述増も内容苦心


 2015年4月6日  産経新聞
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0406/san_150406_4672754325.html

東京電力福島第1原発の事故については全教科書の29%にあたる31点が扱い、現行の16%を大きく上回った。現行教科書では社会、理科、技術・家庭の3教科に記述があるが、今回は保健体育と国語も加わり、5教科に増えた。公民では6点全てがエネルギー問題と絡めて原発事故を記述。「再稼働」と「脱原発」の両論を併記して生徒に議論を促す教科書が目立った。

特に記述が多かったのが公民だ。東京書籍は4ページをエネルギー問題に充て、事故後に設置された原子力規制委員会の役割や、運転開始から40年を超える老朽原発の運転制限まで踏み込んだ。火力、原子力、水力、再生可能エネルギーそれぞれの利点と課題を示した表を載せ、生徒が安全面や経済面から総合的に議論しやすいよう工夫を凝らした。

日本文教出版は、鉱物性燃料輸入額のグラフや原発事故を伝える新聞記事を使って両論を併記。「化石燃料の輸入費用がかかり、経済活動に悪い影響が出る」という再稼働論を、反対論の「安全性に問題がある限り、原発を稼働すべきではない」と比較させた。

各社とも東日本大震災に伴う原発事故という事実を淡々と記述し、原発に安全面の課題があることを指摘。再生可能エネルギーなどの紹介に紙幅を割いているものの、結論的に「脱原発」に踏み込むことはせずに、日本社会がいまだ課題を模索している現状の記述にとどめた形だ。

ある編集担当者は「エネルギー問題は現時点で結論が出る問題ではないので、どこまで踏み込んでいいものか苦心した」と明かし、「脱原発、推進のいずれかへの誘導になりかねないので、バランスを確保する意味でも事実を積み上げた上で両論併記するにとどめざるを得ない」と話した。

また原子力についての記述は難しくなりがち。東京書籍の3年用の理科には当初、原発事故の解説に「炉心」「半減期」など中学校の学習内容になかったり、高校で学習する内容だったりする用語を使っていたが、「生徒にとって理解しがたい」と検定意見が付けられ、修正した。

これまで放射線の記述がなかった保健体育は4点中2点が「放射線と健康」のテーマで、内部被曝(ひばく)と外部被曝の説明やレントゲンなど身の回りの放射線について解説を加えた。国語は光村図書出版の2年用教科書に、原発事故で立ち入り禁止区域に残された動物の写真集の読書案内が掲載された。



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