2015/03/23

埼玉/原発避難に総合ケア必要 川口で早大准教授講演

2015年3月23日 埼玉新聞
http://www.saitama-np.co.jp/news/2015/03/23/10.html


福島県からの避難者を対象としたアンケート調査を基に東京電力福島第1原発事故による被害の実態を考えようと、早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也准教授が、川口市木曽呂の医療生協さいたまで講演を行った。

辻内氏は帰還と賠償をめぐる政府の対応を「構造的な暴力」と批判した上で、避難者への総合的なケアの重要性を訴えた。

アンケート調査は、福島から県内や東京都で避難生活を送っている人を対象に、震災支援ネットワーク埼玉(SSN)と早稲田大が共同で実施。避難者の精神状況などを分析し、社会的ケアの在り方を行政に提言するなどしている。

辻内氏は講演で、原発事故から3年が経過した2014年時点で、依然として約6割の人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えていた可能性を指摘。PTSDの状態が続いている大きな要因の一つとして、避難区域再編による地域の分断と賠償額の格差が挙げられるとしている。

東電が支払う精神的損害に対する1人当たりの慰謝料は、避難区域内と区域外で格差が拡大。政府の区域割りは避難者の不満を募らせ、住民同士の心の溝を深めているという。辻内氏は「ある場所で無理やり線引きされ、その後の人生が大きく左右される。住民同士で賠償額を比べるなど、気持ちの分断が起きている。避難者の生活は深刻化している」と述べた。

政府は、放射線量の高さに応じて警戒区域などを3区域に再編。今後は、線量の下がった地域から避難指示を解除し、住民の帰還を促す方針。しかし、避難指示が解除されると、賠償額が打ち切られると指摘されている。辻内氏は「帰還と賠償をめぐる政府の政策決定は避難者への期待を何度も裏切り、構造的暴力といえる」と批判。

県内には福島から5千人を超える被災者らが避難しており、今後求められる支援として、辻内氏は避難者の声を拾い上げることを専門とする「避難者支援オーガナイザー」の必要性を強調した。さらに、辻内氏は避難者の悩みが賠償問題、近隣関係、仕事、生活費など多岐にわたっていると指摘した上で、「個別のニーズを丁寧に聞き取り、(福祉や雇用など)社会的資源につなげていく役割を私たちが担っていく必要がある」と訴えた。


原発避難の実態を講演する
早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也准教授
=川口市 医療生協さいたま



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