2015/03/16

若い女性 届かぬケア 被災地 つらさ伝えにくく


    
2015年3月16日  東京新聞
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015031602000133.html


東日本大震災の被災地で、見過ごされがちだった若い女性たちのつらさを聞き取り、支援の必要性を提言する調査報告書が、震災から四年の今月、まとまった。十~二十代で被災した女性たちはこの年代特有の痛みを抱えながら、小さな子どもや母親、高齢者に比べて光が当てられず、本人たちも声を上げることが少ない。支援するNPO法人は「しんどさに気付いてあげて」と訴える。 

「避難所で小さい子やお年寄りを優先して、私たちは食べなかった」「被災後の職場では子どもを持つ女性は早く帰り、シングルの自分は働きづめ」-。報告書からは、震災後の若い女性たちが経験し、心にしまい込んできた苦労が浮かぶ。悩みを抱える少女らを支援するNPO法人「BONDプロジェクト」(東京)などが昨年八~十二月、被災三県の女性二十人と支援団体などへのインタビューを基にまとめた。

メンバーは世間話を糸口に一対一でゆっくりと話を聴いた。十代後半の高校生は「女の子だから」と、知識も経験もないまま祖父母の介護を任された。二十代後半の女性は、原発事故の放射能の影響が心配で自主避難し、結婚を考えていた恋人と別れた。復興事業で県外から来た男性に通学路で「かわいいね」と声を掛けられ、怖い思いをしたという人もいた。

聞き取りをした竹下奈都子さん(26)は「ぱっと見には若くて元気な彼女たちは、『大変だったね』と声を掛けてもらえていない」と振り返る。自分だけが大変なわけじゃないから、と言う女性も多かったといい、代表の橘ジュンさん(44)は「友達にも家族にも悩みを言えないと感じていたようだ」と話す。

報告書づくりにかかわった東京大社会科学研究所の皆川満寿美特任研究員は思春期から二十代の女性特有の問題として、性的暴力の対象にされがちなことや、ケアを要しない世代だと思われてしまう点を指摘。政府は震災後、国連婦人の地位委員会で「年ごろの女の子への特別な配慮を」と提案したが、「政策の中に若年女性を位置付け、市町村の防災計画にも反映させることが必要だ」と話す。

調査に参加したNPO法人「オックスファム・ジャパン」(東京)の高橋聖子さんは「声が聞こえないことは、問題が存在しないということではない。聞き取る工夫をし、彼女たちの力を地域で生かすことが大事だ」と提言している。

報告書の内容は十七日、仙台市で開催中の国連防災世界会議の一環として、若い女性の支援を考えるシンポジウム「災害と女の子たち~ガールズ防災会議」で紹介される。


被災地で若年世代の女性から震災後の状況などを聞き取る
NPO法人のメンバー(BONDプロジェクト提供)



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