2014/11/09

復興と放射線量 安心できる情報提供を(北海道新聞 社説)


 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に向け、政府は廃炉や除染、住民の帰還に向けた作業を進めている。
 その中で、放射性物質の状況について政府の情報提供が少ないために、不安を抱く住民が多い。
 放射線量の現状についてきめ細かに情報を公開し、安心につなげていく努力が求められる。先を急ぐあまり、作業の実態について丁寧な説明を怠ってはならない。
 福島第1原発では1号機の建屋カバー解体が始まった。これに対し、地元から放射性物質が飛散しないかとの懸念が出ている。
 昨年8月に3号機のがれき撤去を行った後に、周辺で農作物の放射線量が上がったことが分かった。東電は作業との関連を認めていないが、地元関係者の間では放射性物質の飛散が疑われた。
 原子力規制庁はカバー解体に伴う放射性物質について、東電の報告を受けて地元自治体などに情報を伝える態勢を取っている。
 すでに福島県内の農家は風評被害に悩んでいる。コメや野菜の実証栽培を行い、本格出荷を目指す自治体もある。不安を取り除くためには、もっと積極的な情報開示が必要だ。
 モニタリング体制を強化し、飛散が生じているか否かをきめ細かく知らせるべきだ。作業に使用する飛散防止剤の効果も検証し、発表してはどうか。
 汚染水処理をめぐっては、建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて海に放出し、凍土遮水壁の建設も始まった。一方、汚染地下水の海への流入は続いており、漁業者の不安は消えていない。
 廃炉・汚染水対策では「国が前面に出る」ことになっている。原発港湾内外の放射性物質の状況をさらに詳しく説明してほしい。
 縦割り行政の問題もある。
 9月に開通した帰還困難区域の国道6号周辺は今も線量が高い。環境省は除染効果を確認するため線量を調べ、内閣府も定期的に測定を実施している。廃炉作業を監視する原子力規制庁とは別だ。
 住民にとって生活空間における放射線量は切実な問題である。国が一元的に情報を管理して提供する体制を整えるべきだ。
 帰還をせきたてるようなことがあってはならない。今年になって避難指示が解除された田村市都路地区や川内村の一部では、解除後も放射線量への不安が消えない。
 被災者の気持ちを最優先に考えて、求められる情報を届けていく姿勢が何よりも大事だ。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/573382.html
北海道新聞 社説
2014年11月9日

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